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いずれ生え変わるからと放置されることも多い乳歯の虫歯ですが、放置すると様々なリスクがあります。また、乳歯は虫歯になりやすいため、積極的に予防することが重要です。
本記事では、乳歯の虫歯の特徴や原因、放置するリスクについて詳しく解説します。乳歯の虫歯を予防する方法などもご紹介するので、小さい子供がいる方はぜひ参考にしてください。
乳歯は虫歯になりやすい?
乳歯は永久歯に比べて虫歯になりやすいです。乳歯のエナメル質や象牙質が永久歯よりも薄く柔らかいため、虫歯菌による酸の影響を受けやすく虫歯になりやすいとされています。
しかし、文部科学省のデータによると、虫歯の子供の割合は昭和50年代から年々減少傾向にあるとされており、令和元年のデータでは虫歯のある幼稚園生は31.16%です。このことから、近年は乳歯の虫歯予防に積極的になる方が増えているのが伺えます。
参照元:文部科学省「令和元年度学校保健統計(学校保健統計調査報告書)の公表について 」
乳歯の虫歯の特徴
乳歯の虫歯は、永久歯の虫歯とは異なる様々な特徴があります。ここでは、乳歯の虫歯の特徴について解説します。
進行スピードが速い
乳歯の虫歯の最大の特徴は、進行スピードが速いことです。前述したように、乳歯はエナメル質が薄く柔らかいため、虫歯菌が発生すると一気に進行します。
大人の場合は虫歯になってから神経に達するまで1年近くかかる一方で、乳歯の場合は5~6か月程度で神経に達するといわれています。そのため、虫歯を発見したらなるべく早く歯科医院を受診して治療し、進行させないことが大切です。
見た目で分かりにくい
大人の歯は、虫歯になると見た目が黒や茶色などに変色します。
しかし、乳歯は虫歯になっても白濁する程度のことが多く、素人が見た目で虫歯と判断するのは困難です。また、乳歯は痛みを感じる器官も未熟であり、痛みを感じにくいとも考えられています。
健康な乳歯は表面に透明感があり、ツヤツヤして透き通った白色をしています。虫歯になると歯質が部分的に白くざらつくため、そのような症状がある場合には虫歯の可能性が高いでしょう。
痛みがない
永久歯は虫歯がある程度進行するとすぐに痛みを伴います。
しかし、子供は痛みを感じる器官が未熟であることから、乳歯が虫歯になっても痛みを感じにくいとされています。そのため、虫歯の発見が遅くなりやすいでしょう。
乳歯の虫歯の原因
ここからは、乳歯が虫歯になる原因を解説します。
だらだらと食べている
だらだらと長時間食べ物を摂取する習慣は、虫歯の大きな原因になります。通常口の中は中性に近い状態ですが、食事によって酸性に傾き唾液によって徐々に中性に戻ります。
しかし、だらだら食べたり間食が多かったりすると、中性に戻る時間を確保できません。酸性の状態が長くなってエナメル質が溶け始めて虫歯になるのです。アメやガムなど口の中に残りやすい食べ物を頻繁に食べ続けていると、虫歯になりやすいので注意しましょう。
歯磨きが正しくできていない
歯磨きが正しくできておらず磨き残しが発生することも、虫歯の原因の一つです。お子様が自分の力で正しい歯磨きをするのは難しく、磨き残しが多くなりやすいでしょう。
慣れないうちは、保護者の方が仕上げ磨きをすることが大切ですが、イヤイヤ期など歯磨き自体に拒否反応を示すことも多いです。丁寧に歯磨きができない傾向があるため、虫歯になりやすいのです。
食生活
乳歯の虫歯は、子供の食生活にも大きく影響されます。砂糖は虫歯菌のエサとなり、口内で酸を生成して歯を溶かします。砂糖を多く含む飲食物を好んで頻繁に摂取している子供は、虫歯になりやすいでしょう。
また、栄養バランスが崩れた食生活も、虫歯につながります。カルシウムやビタミンDが不足すると歯が弱くなり抵抗力が低下するため、虫歯になりやすくなるのです。
子供の歯の健康を守るためには、バランスの取れた食生活が不可欠と言えるでしょう。
乳歯の虫歯ができやすい箇所
乳歯の虫歯ができやすい箇所は、年齢によって異なります。
2歳頃までは、上の前歯の唇側が虫歯になりやすいです。3歳頃までは、上顎乳切歯(上の前歯)の隣、3歳以降は上下の奥歯の噛む面、3歳半からは上下の奥歯の隣の歯が虫歯になりやすいと言われています。
特に、前歯は食べ物に触れる機会が多いことから、虫歯になる可能性が高い歯です。また、奥歯には溝があり食べかすが溜まりやすいため、虫歯のリスクが高まります。
必ずしもこの歯が虫歯になるわけではありませんが、目安として知っておけば歯磨きの際に特に注意して磨けるでしょう。
乳歯の虫歯を放置するリスク
「乳歯はどうせ抜けるから」と放置する方も少なくありませんが、放置すると様々なリスクが生じます。乳歯の虫歯を放置するリスクは、次の通りです。
永久歯の歯並びに影響する
乳歯の虫歯は、永久歯の歯並びに影響します。
例えば、重度の虫歯になって乳歯が早期に脱落したり抜歯をしたりすると、隙間ができます。その隙間を埋めるように隣の歯が傾いたり、その隙間に新しい歯が生えたりすることがあるのです。
歯並びが悪くなり、将来的に矯正治療が必要になる可能性が高くなるでしょう。
永久歯も虫歯になりやすい
乳歯同様に、生え変わったばかりの永久歯はエナメル質が弱く虫歯になりやすいです。虫歯を放置すると口の中の虫歯菌が増殖していくため、生えてきた健康な永久歯や他の歯も虫歯のリスクが高まります。
弱い永久歯が生えてくる
乳歯の虫歯が進行して神経が壊死した際に、虫歯の治療をせずに放置すると歯の根の先に膿が溜まります。そのため、乳歯のすぐ下で発育中の永久歯に影響を及ぼすのです。
特に影響するのは、エナメル質の石灰化不全です。生えたての永久歯に白い斑点模様ができたり、茶色く着色した永久歯が生えてきたりします。また、形がいびつな永久歯が生えてくることもあるでしょう。
乳歯の虫歯を予防する方法
ここでは、乳歯の虫歯を予防する方法について詳しく解説します。
歯磨きを徹底する
虫歯を予防するための最も効果的な方法が、毎日の歯磨きを丁寧にすることです。歯が生えそろうまでは保護者が歯磨きを行い、徐々に自分自身できちんと歯磨きができるように練習していきましょう。
特に、就学するまでは自分自身の力で隅々まで歯を磨くことは難しいといえます。子供が自分で磨いた後は、必ず保護者が仕上げ磨きをしましょう。歯ブラシは年齢と口のサイズに合ったものを選び、歯を磨く順番を決めて1本ずつ磨くと磨き残しを減らせます。
また、イヤイヤ期は「歯磨きをしたくない」と泣いて暴れる子も多く、歯磨きが疎かになることもあるでしょう。
しかし、虫歯予防の観点から言うと、イヤイヤ期でも歯磨きをしないという選択肢はありません。保護者が歯磨きをしている姿を目の前で見せてあげると、子どもが歯ブラシに親しみを持ったり、歯みがきの真似をするようになったりして、抵抗感が減る可能性があります。
間食のタイミングと内容を見直す
虫歯予防のために、間食のタイミングを見直しましょう。特に、小さい子は胃の容量も少ないため、間食は栄養補給という観点から必要不可欠です。
しかし、上述の通り頻繁な間食やダラダラ食べることは虫歯の原因になるので、間食は時間を決め、口の中に残りやすい飴やキャラメルなどは避けましょう。砂糖が多い飲食物を、過度に摂取しないように心がけてください。
フッ素を塗布する
フッ素には、歯を強くしたり虫歯菌の働きを抑制したりといった効果があるため、虫歯予防に活用しましょう。特に、子どもの乳歯や生え替わったばかりの永久歯は、歯質が弱く虫歯になりやすいので、フッ素の塗布は効果的です。
シーラント
虫歯予防法の1つであるシーラントは、虫歯になりやすい奥歯の溝を物理的に封鎖します。奥歯の噛む面には細い溝がたくさんあり、溝の奥まで歯ブラシが届かないため虫歯になりやすいです。
溝の中で虫歯菌が繁殖しないように、溝をレジンなど埋める処置をシーラントと言います。シーラント材に含まれるフッ化物によって、歯を強化する効果も期待できます。
通常、予防のために行う処置は保険適用外ですが、シーラントは保険適用です。すでに虫歯になっている歯にはシーラントができない場合もあるので、歯科医院に確認してください。
定期的に歯科検診を受ける
定期的に歯科検診を受け、歯をクリーニングしてもらうことも虫歯予防に効果的です。クリーニングでは、日頃の歯磨きでは落とせない汚れを除去でき、虫歯があった場合には早い段階で見つけて処置できるので、虫歯が悪化するリスクを低減できます。
子供の頃から歯科医院に慣れさせて歯科治療に対する嫌悪感や恐怖心を早めに取り除くことで、将来的な保護者の負担も減らせるでしょう。歯科医師と相談して、徐々に歯科医院で検診を受けられるように取り組んでみましょう。
まとめ
乳歯は永久歯よりもやわらかく未熟であることから、虫歯になりやすいです。また、虫歯の進行が早いため、気が付いたら抜歯をせざるを得ないほど重症化している、という事態にもなりかねません。
また「乳歯は抜けるから、虫歯を放置していても問題ない」と思う方もいますが、乳歯の虫歯を放置すると永久歯にも影響を及ぼします。そのため、定期的に歯科医院を受診し、虫歯がないか確認してもらうことが大切です。
品川港南歯科・矯正歯科クリニックでは、痛みや施術時間を抑えながら自然な仕上がりの治療を目指しています。マウスピース矯正やセラミック治療、虫歯治療、ホワイトニングなどにも力を入れています。