矯正治療は、大きくマウスピース矯正とワイヤー矯正に分けられます。それぞれ特徴の異なる矯正方法なので、自分の歯の状態や性格、求めている見た目に合わせて選びましょう。
今回は、マウスピース矯正とワイヤー矯正の違いについて詳しく解説していきます。
マウスピース矯正とは?
マウスピース矯正は、透明なマウスピースを装着して歯並びを整えていく方法です。
決められた期間ごとに次の段階のマウスピースに交換することで、少しずつ歯に力をかけて動かしていきます。装置が目立たないのが特徴ですが、自己管理が必要なため管理を面倒だと感じる人には不向きです。
ここでは、メリットとデメリットを確認していきましょう。
マウスピース矯正のメリット
まずは、メリットからご紹介します。
装置が目立たない
透明のマウスピース型の装置を使用するので、装着していても目立ちません。周囲にほとんど気づかれることなく治療を行うことができます。
装置が目立つことで治療を躊躇していた方でも、安心して受けられるでしょう。
装置を取り外せる
取り外し可能な装置なので、食事の時や歯みがきの時には外すことができます。煩わしさを感じることなく食事を楽しむことができ、口腔内の清潔も保ちやすいです。装置に食べカスが詰まる心配もありません。
痛みが少ない
矯正治療では歯を動かすので、多少の痛みはつきものです。その中でも、マウスピース矯正は歯にかかる力が穏やかなのでワイヤー矯正と比較すると痛みが少ないとされています。
通院回数が少ない
マウスピース矯正は、患者さまがマウスピースを交換することで歯を少しずつ動かしていくため、装置を調整する必要がありません。調整が必要なワイヤー矯正と比較すると通院回数が少ないです。
ただし、経過観察のための通院は必要です。問題が起こっていないか確認するためにも、必ず通院しましょう。
マウスピース矯正のデメリット
マウスピース矯正のデメリットは、以下のとおりです。
装置の自己管理が必要
マウスピースは取り外しができるメリットがある一方で、装着時間やマウスピースの交換時期を守ることが大切です。装着時間は1日20時間〜22時間が目安です。食事と歯みがきの時間以外は、基本的に装着したままになります。
装着時間や交換時期を守らないと、計画どおりに治療が進みません。また、マウスピースの洗浄や、紛失や破損に注意する必要があるため自己管理が大切です。
管理を面倒に感じる場合は、マウスピース矯正は向いていないかもしれません。
適応症例が限られている
近年では多くの症例の治療が可能になっていますが、歯の移動距離が大きいケースや骨格的な問題があるケースは治療が難しいことがあります。そのような場合は、ワイヤー矯正のほうがスムーズに治療が進むことがあるので検討すると良いでしょう。
ワイヤー矯正とは?
従来からある矯正方法で、歴史があり実績の多い治療法です。歯にブラケットという装置を装着し、ワイヤーを通して力をかけて歯を動かしていきます。
メリットとデメリットを確認していきましょう。
ワイヤー矯正のメリット
ワイヤー矯正のメリットは、以下のとおりです。
適応症例が多い
ワイヤー矯正は実績の多い矯正方法です。さまざまな症例に適応でき、歯の移動距離が大きい症例でも対応できます。力のかかり方を細かく調整することが可能なので、効率的に歯を動かすことができます。
結果的にマウスピース矯正よりも治療期間が短くなることもあるでしょう。
自己管理の必要がない
固定式の装置なので、自己管理の必要がありません。歯みがきが難しくなったと感じる方は多いので、注意して行う必要があります。
ワイヤー矯正のデメリット
ワイヤー矯正のデメリットは、以下のとおりです。
装置が目立つ
歯にブラケットをつけるため、装置が目立ちます。最近では、年齢問わず矯正治療を行う人が増えているため「装置が目立っても気にならない」という方も多いので、デメリットに感じないこともあるでしょう。
白色の装置を使用したり、歯の裏側に装置をつけたりするなどして、できるだけ装置を目立たせない方法もあります。
食事がしづらい
ワイヤー矯正の装置は固定式なので、装置の間に食べ物が詰まったり挟まったりすることがあります。次第に装置があることに慣れていきますが、食べカスを取り除いたり、挟まりやすい食べ物を控えたりするなどの工夫が必要です。
歯みがきがしづらい
歯にでこぼことした装置が取り付けられているため、歯みがきがしづらくなります。細いワンタフトブラシや歯間ブラシなどを使い、丁寧に歯みがきをするようにしましょう。汚れがついたままだと、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
歯科医院に通院する時に、歯のクリーニングも受けるとよいしょう。
痛みや違和感が強い場合がある
ワイヤー矯正は、マウスピース矯正と比較して歯にかかる力が強いです。そのため強い痛みを感じることがあります。
調整直後に痛みを感じやすいので、痛み止めなどを服用して対応しましょう。通常2〜3日で痛みのピークを迎え、その後おさまります。
マウスピース矯正とワイヤー矯正の違い
マウスピース矯正とワイヤー矯正の違いを確認しましょう。
<マウスピース矯正とワイヤー矯正の違い>
治療方法 | マウスピース矯正 | ワイヤー矯正 |
装置 | 透明のマウスピース | 固定式のブラケットとワイヤー |
費用 | 30万円〜120万円程度 | 70万円〜150万円程度 |
治療期間 | 1〜2年半程度 | 1〜2年半程度 |
適応症例 | 限られている | 多くの症例に対応可能 |
見た目 | 目立たない | 目立つ |
痛み | 感じにくい | 調整直後は痛む |
違和感 | 違和感を覚えにくい | 慣れるまでは違和感がある |
歯みがき | しやすい | しにくい |
食事 | しやすい | 食べものが装置に挟まることがある |
管理方法 | ・装着時間や交換時期を守る必要がある ・マウスピースの洗浄をしっかりと行う必要がある ・破損や紛失に注意が必要 | 固定式のためほとんど必要ない |
金属アレルギー | プラスチックのため心配ない | 金属の装置が一般的のためリスクがある |
費用に関しては、治療範囲によって異なります。マウスピース矯正の場合、マウスピースの枚数が少ないほど安くなる傾向があります。ワイヤー矯正の場合は、装置を歯の裏側に装着する裏側矯正のほうが費用が高くなることが多いです。
マウスピース矯正は薄いプラスチック製の装置を使用するので、あまり違和感を覚えない人が多いです。ワイヤー矯正では装置が粘膜に触れるため、違和感を覚えやすいでしょう。
重要な違いは、金属アレルギーのリスクでしょう。マウスピース矯正の装置は金属を使用していないため、金属アレルギーの心配はありません。
ワイヤー矯正では金属の装置を使用するのが一般的なので、金属アレルギーのリスクがあります。セラミック製のブラケットや、金属アレルギーに対応したワイヤーを使用することで対応できる場合はありますが、高額になることが多いです。
ご自身に適した矯正方法を選ぶ方法
ここまでメリットとデメリットを解説してきましたが、ご自身にとって何を優先するかで矯正方法を選択していくと良いでしょう。
ただし、歯科医師が推奨する矯正方法を選んだほうが治療がスムーズに進む場合もあります。マウスピース矯正とワイヤー矯正では、得意とする歯の動かし方が異なるためです。
どの治療法が適しているのかわからない場合は、歯科医師に提案してもらうとよいでしょう。
装置が目立つのが嫌な人や、周囲に気づかれずに矯正治療をしたい人、痛みや違和感が強いのが嫌な人は、マウスピース矯正が適しているかもしれません。自己管理が苦手な方や、マウスピースの洗浄を面倒に感じる方は、マウスピース矯正は向かないでしょう。
装置の自己管理が難しそうな方や、実績のある方法で確実に歯並びを治したいと考える方は、ワイヤー矯正を選択する傾向があります。
まとめ
矯正治療を希望する場合には、マウスピース矯正かワイヤー矯正かを選択する必要があります。それぞれ特徴が異なるため、まずは歯並びの状況から矯正方法を歯科医師に提案してもらうと良いでしょう。
その上で、ご自身の希望や性格に合わせて矯正方法を選択していきましょう。