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マウスピース矯正を検討している方の中には、歯ぎしりや食いしばりの癖がある方もいるでしょう。歯ぎしりや食いしばりを日常的に行っていると、歯やあごに強い負荷がかかり、さまざまな影響を及ぼすことがあります。
歯ぎしり・食いしばりの癖がある方がマウスピース矯正をする場合、矯正装置に影響を及ぼす可能性もあるため気をつけなければなりません。
今回は、歯ぎしり・食いしばりの癖がある方がマウスピース矯正をする場合の注意点について詳しく解説します。
歯ぎしり・食いしばりとは?
歯ぎしりとは、上の歯と下の歯を強く擦り合わせるような動きのことで、キシキシ・ギリギリ・ガリガリといった音が出ることもあります。
一方、食いしばりとは、歯をギュッと強く噛みしめた状態のことを指します。食いしばりは音が出ないため、家族などの周りの人も気づきにくいことが特徴です。
歯ぎしり・食いしばりの原因
では、歯ぎしりや食いしばりはどのようなことが原因で起こるのでしょうか。
ここでは、おもな原因を4つ解説します。
ストレス
歯ぎしりや食いしばりの原因として最も多いといわれているのが、ストレスです。歯ぎしりや食いしばりは、寝ている間に無意識に行っている方が多いですが、これは寝ている間にストレスを解消しようと身体が無意識に行っている現象だといわれています。
例えば、仕事や環境の変化などでストレスを抱えている場合、寝ている間にも緊張状態が続いている可能性があります。また、寝ているとき以外にも集中しているときに無意識に歯を食いしばっている方も多いでしょう。
力を使うスポーツや作業
ラグビーやアメフトなどの強い衝撃を受けるスポーツを行っている方や重い荷物を持ち上げる作業などを日常的に行っている方は、ギュッと奥歯に力を入れることが習慣になっていることがあります。
実際に、このようなスポーツや作業によって歯に強い負荷がかかり、奥歯がボロボロになってしまうケースもあります。
噛み合わせや骨格のズレ
噛み合わせや骨格のズレによって、歯ぎしりや食いしばりが引き起こされることもあります。例えば、もともと上あごと下あごの大きさにズレがある場合や詰め物により段差ができてしまった場合などが考えられるでしょう。
特に、金属製の詰め物や被せ物をしている方は、金属成分の溶け出しや温度変化によって噛み合わせが変化することがあります。
成長期特有の歯ぎしり
幼児期の子どもの中には、寝ている間に歯ぎしりをする子がいます。これは、あごが成長することによって生じる噛み合わせの変化に対応するための生理的な現象といわれています。特に、乳歯から永久歯に生え変わる時期に歯ぎしりをする子が多い傾向にあります。
このような成長期の歯ぎしりは、あごや歯の成長とともにおさまっていくことがほとんどですので、心配する必要はありません。
歯ぎしり・食いしばりをすると歯や顎にどのような影響がある?
歯ぎしりや食いしばりを長期にわたって続けると、身体にさまざまな影響を及ぼすことがあります。
ここでは、6つの影響について詳しく解説します。
歯の擦り減りや割れ
日常的に歯に大きな負荷がかかることにより、歯の表面がすり減ったり、割れたりすることがあります。そのほか、亀裂が入ることや欠けることも考えられるでしょう。
歯がしみたり痛んだりするような場合には、歯ぎしりや食いしばりによって歯の見えない部分がダメージを受けている可能性があるため、歯科医院で診てもらいましょう、
歯ぐきや骨への負担
歯ぎしりや食いしばりによる日常的な強い負荷は、歯だけでなく、歯ぐきや歯を支える骨にまで影響を与えることがあります。
特に、すでに歯周病にかかっている方は、歯ぎしりや食いしばりにより歯を支えている歯槽骨の吸収が進みやすくなるため注意が必要です。
頭痛や肩こり
歯を強く食いしばった状態や強い力で歯ぎしりをする状態が続くと、あごや首、肩などの筋肉が緊張し、血液の流れが悪くなることがあります。このようなケースでは、朝起きたときに頭が重く感じたり、頭痛や肩こりによって不快感を覚えたりすることがあります。
そのほかにも、寝たのに寝た気がしない、寝ても疲れが取れないと感じることもあります。
顎関節症
歯ぎしりや食いしばりを放置すると、顎関節症を引き起こすことがあります。口を大きく開けたときにあごがカクッと鳴るのが特徴です。顎関節症になると、口を開け閉めするときにあごに痛みが出たり、噛み合わせに違和感を覚えたりすることがあります。
重度になると、あごの関節の不調により口が開閉しにくくなったり、痛みにより口が開けられなくなったりすることもあるでしょう。
顔の見た目が変わってしまう
歯ぎしりや食いしばりによって、顔の見た目が変わる可能性もあるでしょう。
歯をギュッと強く噛みしめたときに、頬骨の下あたりに力が入るのが確認できると思いますが、この部分にある筋肉を咬筋(こうきん)といいます。咬筋は食べ物を噛むときに使う筋肉で、負荷をかけ続けると筋肉が発達してエラが張ったようになることもあるでしょう。
歯ぎしり・食いしばりをする方がマウスピース矯正をする場合の注意点
歯ぎしりや食いしばりの癖があるからといってマウスピース矯正ができないわけではありません。
ただし、そのような習慣がある場合にはいくつか注意しなければならないことがあるため、確認しておきましょう。
マウスピースの変形や破損
歯ぎしりや食いしばりを続けると、マウスピースに強い力がかかるため変形したり破損したりする恐れがあります。マウスピース矯正ではマウスピースを1日20〜22時間装着する必要があり、寝ている間も装着し続けなければなりません。
マウスピースが変形・破損すると装着時に違和感が出たり、治療計画通りに治療が進まなくなったりすることも考えられるでしょう。
また、マウスピースが変形・破損すると、装着できなくなる可能性もあるため注意が必要です。
治療期間が延びる
マウスピースが変形すると、本来予定していた位置へ歯を動かすことができなくなる可能性があります。また、前述したとおり、変形・破損によってマウスピース自体が装着できなくなるケースもあるでしょう。
このような場合には、マウスピースを作り直す必要があるため、作り直している間は治療が滞ってしまいます。その分、治療期間が延びることが考えられるでしょう。
治療費用がかさむ
マウスピースの変形や破損により作り直しが必要になった場合、歯科医院によっては患者さん自身が費用を負担しなければなりません。そのような事態を回避するために、できるだけマウスピースに強い負荷がかからないように対処することが大切です。
歯ぎしり・食いしばりでマウスピースが割れたときの対処法
割れたマウスピースをそのまま使用し続けることはできません。また、接着剤などで修理することも厳禁です。マウスピースの変形や破損に気付いた時点で、すみやかに歯科医師に相談しましょう。
マウスピースが割れた場合は基本的には作り直しが必要ですが、交換時期が近い場合には、次のマウスピースを装着して対応することもあります。
歯ぎしり・食いしばりを改善するためには
歯ぎしりや食いしばりは寝ている間にしていることも多いため、完全に解消するのは難しいですが、マウスピースへの負荷を軽減することは可能です。
3つの方法をご紹介するので、ぜひ心がけてみてください。
ストレスを解消する
歯ぎしりや食いしばりの原因となるストレスを上手に解消しましょう。
長時間のデスクワークなどの場合、無意識のうちに歯を食いしばっていることもあります。椅子から立ち上がって身体を動かしたり、あごを動かしたりする時間を意識的につくりましょう。
咬筋のマッサージをする
緊張状態にある咬筋をマッサージしてほぐすことも効果的です。
咬筋が凝り固まっているときには、首や肩まで凝っていることが多いため、あご・首・肩をマッサージして、リラックスした状態にすることで睡眠中の歯ぎしりや食いしばりを改善できることがあります。
意識してやめる
歯ぎしりや食いしばりは、意識することで頻度を減らすことができます。スマートフォンを操作しているときやデスクワーク中など、何かに集中しているときに歯をギュッと食いしばっていることに気づいたら、すぐに力を抜くようにしましょう。
忘れそうな場合には、リマインダー等で定期的に通知して意識を高めるのもよいでしょう。
まとめ
今回は、歯ぎしり・食いしばりの癖がある方がマウスピース矯正をする場合の注意点について解説しました。
マウスピース矯正では、装具を1日20〜22時間装着する必要があります。そのため、日常的に歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、マウスピースの変形や破損のリスクが高まるため注意が必要です。
歯ぎしり・食いしばりによってマウスピースが破損・変形すると作り直しが必要になる場合があります。マウスピースの作り直しには時間がかかり、治療期間が延びる可能性があるため、意識して改善していくことが大切です。
マウスピース矯正を計画どおりに進めるためにも、この記事でご紹介した内容を参考に、歯ぎしり・食いしばりを改善しましょう。