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インビザラインは歯ぎしりや食いしばりが慢性的に起こっている場合、適応が困難になります。すでにインビザラインをしている方も、歯ぎしりや食いしばりによって装置が破損するなどのリスクがあります。
今回は、歯ぎしりや食いしばりがインビザラインへ与える影響について解説していきます。
歯ぎしりとは?
歯ぎしりとは、ブラキシズムとも呼ばれており、睡眠中または無意識のうちに歯と歯をすり合わせることをいいます。歯ぎしりには、以下の2種類があります。
グラインディング | 上下の歯をギリギリと横にすり合わせること |
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タッピング | 上下の歯をカチカチと縦に噛み合わせること |
主に睡眠中にみられるため、自分で気づくことは少なく、他人に指摘されて自覚することがほとんどです。また、歯科検診の際に、歯の異常なすり減りや顎の骨の発達により診断されることもあります。
食いしばりとは?
食いしばりとは、クレンチングとも呼ばれており、上下の歯を強く噛みしめることをいいます。
通常、上下の歯にはわずかな空間があり歯は接触していません。歯ぎしりは睡眠中に発生することがほとんどですが、食いしばりは日中にも起こっている場合があります。日中の歯を食いしばりによる顎の骨への負荷は約60〜70kg、睡眠中の負荷は体重の2倍以上ともいわれています。
歯ぎしり・食いしばり癖があってもインビザラインはできる?
インビザラインに使用されるマウスピースの厚さは0.5mmほどしかありません。ほかの治療で使用されるマウスピースとは異なり、可能な限り違和感を除去するため、かなり薄く作られています。
歯ぎしりや食いしばりの力は相当強く、インビザラインが破損する可能性が高くなります。一時的な歯ぎしりや食いしばりであればインビザラインは可能ですが、癖になっている場合は、長時間のマウスピース装着が必要となるインビザラインは難しいでしょう。インビザラインができないと判断された場合は、ワイヤー矯正などのほかの矯正方法に変更します。
インビザラインで歯ぎしり・食いしばりは治る?
インビザライン治療をすれば歯並びがよくなり、歯ぎしりや食いしばりも改善するのではないかと思ってしまいますが、歯ぎしりや食いしばりを矯正で治すことは難しいです。歯並びの関係で上下の歯が強く接触している場合を除き、歯ぎしりと食いしばりには、ほかに考えられる理由がいくつかあるからです。
また、歯ぎしりや食いしばりの治療としてナイトガードを使用しますが、インビザラインに使用されるマウスピースとは素材が異なります。インビザラインはポリウレタン製の素材で、厚みは0.5mm程度です。一方、歯ぎしりや食いしばりの治療に使用されるマウスピースはゴム製またはレジン製で、厚みは2mm程度です。厚みをもたせることで噛みしめる力を弱くするため、インビザラインで歯ぎしりや食いしばりの改善を期待することは難しいでしょう。
歯ぎしり・食いしばりでインビザラインが壊れてしまったら!
インビザラインが破損すると歯を思うように動かせなくなり、矯正ができなくなります。また、破損したインビザラインの一部を飲み込む危険性も考えられます。歯ぎしりや食いしばりでインビザラインが破損した場合は、すぐに歯科医院へ連絡しましょう。ひび割れなど破損が軽度であれば、すぐに修復できる可能性があります。
しかし、欠損など破損が大きい場合はインビザラインを作り直さなければなりません。インビザラインのマウスピースは海外製のため、発注してから手元に届くまで1か月ほどかかります。治療中に破損してしまっても、すぐに再開することはできないため、治療期間は予定よりも長くなるでしょう。
歯ぎしり・食いしばりの原因
歯ぎしりや食いしばりの原因は解明されていませんが、現在考えられている理由は以下の3つです。
・ストレス
・歯並びや噛み合わせが悪い
・眠りが浅い(睡眠時無呼吸症候群など)
食いしばりは、以下の原因も考えられます。
・集中しているとき
・力仕事やスポーツなど全身に強い力を必要とするとき
歯ぎしり・食いしばりによる影響
食事の際の噛む力が約10㎏なのに対し、歯ぎしりや食いしばりにかかる負荷は体重の2倍以上です。特に睡眠中は負担が長時間にわたるので、歯や顎の関節にさまざまな不調をきたす可能性があります。
歯のすり減りや欠陥
歯ぎしりや食いしばりは歯に強い摩擦や圧力が生じるので、歯がすり減ったり欠けたりします。
詰め物や被せ物が取れる
差し歯がある場合は、天然の歯と同様にすり減ったり欠けたりします。歯ぎしりや食いしばりは、詰め物や被せ物の劣化を早め、最悪の場合は抜け落ちる可能性もあります。
知覚過敏や歯周病が悪化する
歯ぎしりや食いしばりで歯の表面にあるエナメル質が削れると、神経までの距離が近くなり、歯がしみやすくなります。また、強い噛みしめは歯茎にも影響し、歯肉が徐々に上がってくることにより歯周病の悪化につながる恐れがあります。
エラが張る
噛みしめる力が強いと顎の筋肉が大きく発達し、エラが張ったように見えます。
顎関節症になる
歯ぎしりや食いしばりによって顎の骨や関節に強力な負荷がかかるため、起床時に顎が重く感じたり、痛みを感じたりします。顎関節への負担が大きくなると口が開きづらくなり、顎関節症を発症するケースもあります。
頭痛や肩こりが生じる
長時間にわたって顎に強い力が加わると、顎の近くのこめかみや首、肩の筋緊張が続き、頭痛や肩こりが発生することもあります。
歯ぎしり・食いしばりを改善しよう
歯ぎしりや食いしばりを改善することにより、インビザラインが受けられるようになる可能性があります。実際にインビザラインの治療中で歯ぎしりや食いしばりに悩んでいる方もぜひ参考にしてください。
ナイトガードを装着する
歯ぎしりや食いしばりの対策として、ナイトガードを装着する方法があります。ナイトガードを装着することにより、直接歯が当たらないようにして歯のすり減りや顎の骨にかかる圧力を軽減します。保険適用になるため、3,000円程度で作成が可能です。
ふだんから食いしばりをしていないか意識する
食いしばりは、集中しているときなどの日中にも起こることがあります。ふだんから自分が食いしばりをしていないか意識して、食いしばりの頻度を減らしていきましょう。舌の先端を上の前歯の裏の歯茎にあてることで上下の歯に空間をつくることができるため、食いしばりに気づいたら試してみてください。
また、今まで歯ぎしりや食いしばりがなかった方でも、インビザラインの装着中に装置が気になり歯をすり合わせたり、食いしばってしまうことがあります。慣れることが大事ですが、気になっても装置に刺激を与えないようにしましょう。
ストレスを溜めない
歯ぎしりや食いしばりは、ストレスが原因ともいわれています。そのため、日頃からストレスを溜めないようにすることが大事です。就寝前の数時間前には入浴を済ませ、寝る直前はスマートフォンを見ないようにするなど、リラックスした状態で眠りにつけるようにしましょう。
うつぶせ寝をしない
うつぶせ寝は顎の骨に負担がかかり、歯ぎしりや食いしばりを誘発させます。横向きで寝る場合も下側になった顎に負担がかかるため、食いしばりが強くなり顎関節症が発症する可能性もあります。就寝時の体勢は仰向けがよいでしょう。
まとめ
インビザラインを希望する場合、まずは歯ぎしりや食いしばりの改善を目指しましょう。歯ぎしりや食いしばりが癖になっている場合は、十分な効果が得られない可能性や、治療期間が長くなり費用がかさむことがあります。現在はワイヤー矯正でも透明なブラケットを使用できるなど、目立ちにくい矯正装置もあるため、改善が難しければほかの矯正方法を検討してみるのもよいかもしれません。