目次
歯列矯正の方法には、主にワイヤー矯正とマウスピース矯正があります。
マウスピース矯正は、マウスピースを装着することで歯並びを整える矯正方法です。使用するマウスピースは透明であるため、目立ちにくく、周りに気づかれにくいことから多くの方に選ばれています。
受け口にお悩みの方のなかには「マウスピース矯正で受け口は治せるの?」という疑問をおもちの方もいるでしょう。
そこで今回は、受け口はマウスピース矯正で治せるのか解説します。マウスピース矯正で受け口を治すメリットや治療期間、費用についても解説しますので、マウスピース矯正で受け口を治したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
受け口とは?
受け口は、上下の歯がうまく噛み合っていない不正咬合の一つで、反対咬合とも呼ばれています。本来は上の歯が下の歯に覆いかぶさる状態であるのに対して、受け口は下の歯が上の歯よりも前に出ている状態です。
受け口には、歯槽性反対咬合と骨格性反対咬合の2種類があります。歯槽性反対咬合とは、歯の生える向きに問題があって受け口になっている状態です。骨格性反対咬合は、上顎が十分に成長していなかったり、下顎が過剰に成長したりして受け口になっている状態です。
受け口になる原因
受け口になる原因は、主に以下の3つです。
口周りの癖
乳幼児期の指しゃぶりや頬杖をつく癖、舌で前歯を押す癖などの口周りの癖が原因で受け口となることがあります。これらは、いずれも指や舌で前歯を押している状態です。
短い期間であれば歯並びへの影響は少ないですが、これらの癖によって継続して前歯に力が加わると受け口になる可能性があるのです。
口呼吸
通常、舌は上顎についている状態が正しいです。
しかし、口呼吸だと、口がずっと開いた状態になり、舌の位置が下がります。舌の位置が下がると、下顎が過剰に成長して受け口になることがあるのです。
遺伝
遺伝で受け口になることもあるでしょう。ご両親や近い親族に受け口の方がいる場合、骨格の遺伝によってお子さまも受け口になる可能性があります。
受け口を放置するリスク
受け口を放置することによる主なリスクは、以下の3つです。
滑舌が悪くなる
受け口を放置すると滑舌が悪くなることがあります。
受け口だと下の前歯が上の前歯よりも前に出ているため空気が漏れやすいです。また、舌の動きが制限されるため、滑舌に影響を与えることがあります。特に、前歯の裏に舌を当てるサ行やタ行の発音が難しくなるでしょう。
咀嚼が十分に行えない
咀嚼するときには、食べものを噛む・切断する・すりつぶすといった複雑な動きが繰り返し行われています。これらの複雑な動きをするためには、上の歯と下の歯が噛み合っていることが重要です。
受け口の場合、下の前歯が上の前歯よりも前に出ているため、食べものを噛み切ることが難しくなるでしょう。咀嚼を十分に行えないまま飲み込むと、消化不良にもつながります。
見た目がコンプレックスになる
受け口は下顎が前に出ている状態であるため、下顎が大きく見えたり、横顔のラインが崩れたりします。横顔のラインはなかなか隠せないため、コンプレックスになりやすいのです。
受け口はマウスピース矯正で治せる?
上述のとおり、受け口には歯槽性反対咬合と骨格性反対咬合があります。
歯の生え方に問題がある歯槽性反対咬合であれば、マウスピース矯正で治療できるでしょう。歯槽性反対咬合の場合は、歯の向きをまっすぐに整えることで受け口を改善できます。
ただし、あまりにも歯の傾きが大きい場合には、マウスピース矯正だけでは治療が難しいケースもあります。
また、骨格性反対咬合の場合は、下顎のズレを改善する必要があるため、マウスピース矯正での治療は難しく、外科的手術やワイヤー矯正での治療が必要になるでしょう。
マウスピース矯正で受け口を治すメリット
マウスピース矯正で受け口を治すメリットは、以下の4つです。
目立ちにくい
マウスピース矯正で使用するマウスピースは薄く透明であるため、日中つけていても目立ちにくく、周りの人にも気づかれにくいでしょう。ワイヤー矯正のように見た目を気にせずに歯並びを矯正できる点は大きなメリットといえます。
取り外しができる
矯正で使用するマウスピースは取り外しが可能です。食事の際や歯磨きの際には外すことができるので、ふだんどおりに食事を楽しめ、またお口の中を清潔に保つことができます。
ただし、マウスピースの装着時間を守る必要があります。装着時間を守ることで矯正効果が得られるため、むやみにマウスピースを外すことは避けましょう。
金属アレルギーの心配がない
矯正で使用するマウスピースはポリウレタンというプラスチック素材でできています。金属を使用しないため、金属アレルギーを引き起こす心配がありません。
痛みが少ない
ワイヤー矯正の場合は、歯に装着した矯正器具に強い力を加えて歯を動かすため、痛みが出ることがあります。
一方、マウスピース矯正では、マウスピースを毎日決められた時間装着し、一定期間ごとに交換しながら少しずつ歯を動かすため痛みが少ないのです。
ただし、全く痛みがないわけではありません。歯が移動する際には、歯を移動させる方向に向かって、歯を支える歯槽骨が少しずつ形を変えています。このとき、個人差はありますが痛みが生じる場合もあるのです。
マウスピース矯正で受け口を治すデメリット
見た目を気にせず治療を進められるマウスピース矯正ですが、いくつかのデメリットもあります。
マウスピース矯正で受け口を治すデメリットは、以下のとおりです。
難しい症例には対応できない
マウスピース矯正の欠点は、すべての症例に対応できるわけではないという点です。受け口に関しても、歯の生え方に問題があるケースであれば治療できますが、骨格に問題があるケースは治療できない可能性があるのです。
歯を大きく移動させなければならない症例の場合には、ワイヤー矯正などの別の治療法を選択する必要があるでしょう。
マウスピース矯正をはじめる前には、適応可能かどうか歯科医師に相談しましょう。
自己管理が必要
マウスピース矯正は、自分でマウスピースを装着・交換しながら歯並びを整える矯正方法です。
マウスピースを1日20〜22時間装着し、少しずつ形の異なる複数枚のマウスピースを決められた順番に交換しなければなりません。
そのため、自己管理をしっかりと行わないと、思うような結果が得られない可能性があります。
マウスピース矯正で受け口を治す場合にかかる期間
マウスピース矯正で受け口を治す場合にかかる期間は、個人差があるため一概にはいえませんが、一般的には1〜2年程度です。
ただし、軽度の症例であれば半年程度で治療が終了する場合もあるでしょう。重度の症例の場合には、3年程度かかる場合もあります。
マウスピース矯正で受け口を治す場合にかかる費用
マウスピース矯正をはじめとした矯正治療は、基本的に保険が適用されません。自費診療になるため、費用は歯科医院によって異なりますが、マウスピース矯正で受け口を治す場合にかかる費用は、70万〜100万円程度が相場となります。
歯並びの状態によっても費用は異なるため、詳しくは歯科医院で確認しましょう。
まとめ
受け口には歯槽性反対咬合と骨格性反対咬合の2種類があり、歯の生え方に問題がある歯槽性反対咬合であればマウスピース矯正で治せる可能性があります。骨格性反対咬合の場合は、外科的手術やワイヤー矯正などの別の治療が必要になるでしょう。
マウスピース矯正には装置が目立ちにくいというメリットがあります。また、取り外しができる点も大きなメリットといえるでしょう。
しかし、マウスピースの装着時間や交換時期を守らなければ、計画どおりに治療を進められません。また、時間も費用もかかる治療です。
マウスピース矯正を検討する際は、メリット・デメリットをしっかりと理解することが重要です。また、ご自身の歯並びによってはマウスピース矯正の適応とならない場合があるため、カウンセリングを受けて、歯科医師に相談しましょう。