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受け口とは、下の歯が上の歯より前に出ている噛み合わせの状態で、専門的には反対咬合(はんたいこうごう)と呼ばれます。見た目に影響があるだけではなく、発音や咀嚼(そしゃく)に問題を生じることもあり、矯正治療が必要とされるケースが少なくありません。
子どもの頃に治療するイメージが強いかもしれませんが、大人になってからでも受け口の矯正は可能です。最近では、見た目の美しさだけでなく、健康面を考慮して治療を決める人も増えています。
この記事では、受け口の基本的な知識から、大人になってからの矯正方法、実際にかかる費用までわかりやすく解説していきます。受け口に悩んでいる方や治療を検討している方にとって、判断材料となる情報をお届けします。
受け口とは

受け口とは、上下の歯の噛み合わせが通常とは逆になっている状態を指します。一般的な噛み合わせでは、上の前歯が下の前歯より少し前に出ていますが、受け口ではこの関係が逆転します。下の前歯が前に出ているため、横顔や口元の印象に大きな影響を与えます。
受け口の程度には個人差があり、軽度のものから、下あごそのものが大きく前に出ている骨格的な問題を伴うケースまでさまざまです。見た目の問題だけではなく、食べ物をしっかり噛めなかったり、発音が不明瞭になったりと、機能面の不具合を引き起こすことも少なくありません。
そのため、審美的な理由に加え、健康的な生活を送るためにも治療が勧められることが多いです。
受け口を放置するリスク

受け口は、見た目のコンプレックスにつながるだけでなく、機能面にもさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。軽度であっても放置していると、年齢とともに症状が進行することがあり、結果的に治療の難易度や負担が増すことになりかねません。
日常生活の質に関わる問題も多く、できるだけ早い段階で適切な対応を取ることが望まれます。ここでは、受け口を放置することで起こり得る具体的なリスクについて詳しく解説します。
消化不良や顎関節症のリスク
受け口は噛み合わせが悪いため、食事の際に食べ物を十分に噛み砕くことが難しくなります。これにより、消化不良を起こしやすくなり、胃腸への負担が大きくなる可能性があります。
また、上下の歯が正しく噛み合わない状態が続くことで、顎の筋肉や関節に過度な負荷がかかり、顎関節症を引き起こすリスクも高まります。顎の痛み、口の開閉時の違和感、さらには肩こりや頭痛など、全身症状として現れることもあります。
発音や見た目への影響による精神的ストレス
受け口の状態では、特定の発音、特にサ行やタ行が不明瞭になることがあります。これが会話における聞き取りにくさを引き起こし、対人関係においてストレスを感じる原因になることもあります。
また、下あごが突出して見えることで顔のバランスが崩れ、外見へのコンプレックスを抱くケースも少なくありません。こうした心理的負担が積み重なることで自信を失い、社会的な活動を避けるようになる人もいます。
受け口になる原因

受け口は遺伝や成長の過程で自然に生じることもありますが、生活習慣や癖など後天的な要因によっても引き起こされるケースもあります。原因を知ることで予防や早期対処がしやすくなります。
ここでは、代表的な受け口の原因をいくつか紹介します。
遺伝
最も一般的な原因のひとつが、遺伝です。骨格的特徴を親から受け継ぐことで、受け口になるケースがあるのです。下あごが大きく前に出やすい家系や、上あごが小さく成長しにくい傾向があると、自然と受け口になりやすくなります。
骨格の問題は成長とともに顕著になるため、子どもの頃から注意深く観察することが大切です。
乳歯の生え替わりや歯並びの問題
乳歯から永久歯に生え替わる時期に、歯の生え方や位置に問題があると、そのまま受け口の状態で定着することがあります。特に、前歯が早く抜けた場合や、永久歯が内側に生えてきた場合には注意が必要です。
歯並びの問題は成長期に矯正することで改善が見込めますが、大人になってからでも治療は可能です。
舌の位置や口の癖による影響
舌を下の前歯に押し付ける癖や、口呼吸、うつぶせ寝、頬杖といった日常的な習慣も、受け口の原因になります。これらの癖が長期間にわたって続くと、歯や顎に力がかかり、噛み合わせが徐々にずれることがあります。生活習慣の見直しによって、悪化を防ぐことが可能です。
大人になってからでも受け口矯正はできる?

「もう大人だから矯正は無理では?」と感じている方も多いかもしれませんが、結論から言うと、大人になってからでも受け口の矯正は十分可能です。医療技術や矯正装置の進化により、目立ちにくく、生活への影響も少ない方法で治療を受けられるようになっています。
子どもと大人の矯正治療の違いは、骨の成長が終了しているかどうかです。成長期の子どもは骨格自体のコントロールが可能ですが、大人は基本的に歯の移動のみでの対応となるため、治療計画が異なります。
しかし、適切な診断と治療法を選ぶことで、機能面・審美面の両方において十分な改善が見込めます。また、受け口が骨格的に重度である場合でも、外科的な処置と矯正治療を組み合わせることで改善が可能です。
治療期間は年齢や症状によって異なりますが、見た目や噛み合わせに長年悩んでいた方にとって、生活の質を大きく向上させるきっかけになるでしょう。大人だからとあきらめる必要はありません。
受け口を矯正する方法

受け口の矯正方法にはさまざまなものがあり、症状の程度や骨格の状態、患者さまの年齢やライフスタイルなどに応じて選択されます。特に、大人の矯正では、見た目への配慮や社会生活との両立が求められるため、目立ちにくい装置や負担の少ない方法が選ばれることが増えています。
ここでは、主な矯正方法を紹介し、それぞれの特徴を解説します。
ワイヤー矯正(ブラケット矯正)
もっとも一般的で実績のある方法が、ワイヤーとブラケットを使った矯正治療です。歯の表面に金属製のブラケットを取り付け、そこにワイヤーを通して歯を少しずつ移動させていきます。重度の受け口にも対応できるため、多くの症例に用いられます。
マウスピース矯正
透明なマウスピースを使って歯を徐々に動かしていく方法です。定期的にマウスピースを交換しながら、段階的に治療を進めます。装置が目立ちにくく、取り外しも可能なため、食事や歯磨きの際に不便を感じにくいのが特徴です。
ただし、適応できるのは軽度から中程度の症例に限られ、重度の受け口には対応が難しい場合があります。
外科矯正
骨格的な問題が大きく関わっている重度の受け口では、矯正治療だけでは改善が難しい場合があります。そのような場合には、外科手術によって、下あごや上あごの骨の位置を調整し、正常な噛み合わせに整える外科矯正が検討されます。
手術前後に矯正治療を組み合わせることで、見た目と機能の両面で高い効果が期待できます。
ただし、入院や全身麻酔が必要となるため、事前の準備と十分な説明が重要です。
受け口を矯正する場合にかかる費用

受け口の矯正にかかる費用は、選択する治療法や症状の程度、治療期間、使用する装置の種類によって大きく異なります。基本的に大人の矯正治療は自由診療となるため、保険が適用されない場合が多く、ある程度まとまった費用が必要になります。
以下に、主な矯正方法ごとの費用の目安を紹介します。
ワイヤー矯正の費用
ワイヤー矯正は20万円〜100万円程度が一般的です。金属ブラケットを使用した場合は費用が抑えられますが、審美性の高いセラミックや舌側(裏側)矯正を選ぶと、費用は高くなりやすいです。
また、調整料や診察料が月ごとに発生することが多いため、トータルでの見積もりを確認することが大切です。
マウスピース矯正の費用
マウスピース矯正は、症状が軽度の場合で30万円から、中〜重度の場合で100万円を超えることもあります。透明で目立たず取り外しが可能な利便性から人気がありますが、使用するマウスピースの枚数や治療期間に応じて価格が変動します。
定期的なマウスピースの交換や再スキャンなど、追加費用がかかる場合もあります。
外科矯正の費用
外科手術を伴う矯正治療の場合、手術費用と矯正費用を合わせて150万円〜250万円程度が相場とされています。
ただし、顎変形症など、保険が適用される場合には上記の金額よりも低い金額で治療を受けることが可能なケースもあります。保険が適用されるためには一定の条件があり、事前の精密検査と診断が必要です。
その他にかかる費用
初診相談料、精密検査費用(2〜5万円)、保定装置の費用(3〜10万円)など、基本治療費以外にもさまざまな費用が発生します。また、矯正期間後には後戻りを防ぐための保定治療も必要となるため、治療全体の計画を立ててから費用の見積もりを確認することが重要です。
まとめ

受け口は見た目だけでなく、噛み合わせや発音、顎関節など健康面にも大きな影響を与える可能性があります。大人になってからでも矯正治療は十分に可能であり、症状やライフスタイルに合わせてさまざまな治療法が選べる時代となっています。
特に、近年では目立たないマウスピース型の装置や審美性に配慮したブラケットなど、社会人でも安心して取り組める選択肢が増えています。
治療を検討する際は、歯科医師によるカウンセリングを受け、自分の状態に合った方法を見つけることが大切です。
品川港南歯科・矯正歯科クリニックでは、痛みや施術時間を抑えながら自然な仕上がりの治療を目指しています。マウスピース矯正やセラミック治療、虫歯治療、ホワイトニングなどにも力を入れています。