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マウスピース矯正は、透明なマウスピースを使って歯並びを整える矯正方法です。見た目に与える影響が少ないことや、取り外し可能で日常生活におけるストレスが少ないことから、多くの人々に選ばれています。
しかし、矯正治療の一環として、歯を削る場合があることをご存じでしょうか。歯を削ると聞いて不安に思っている方もいるでしょう。
この記事では、マウスピース矯正において歯を削るメリットとデメリット、そして歯を削る具体的な方法について詳しく解説します。歯を削ることに不安を感じている方や、マウスピース矯正を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
マウスピース矯正では歯を削る?
美しい歯並びを手に入れるために、マウスピース矯正を選択する人が増えています。今までの矯正治療の主流であったワイヤー矯正とは異なり、周囲の人に目立ちにくいことから人気です。
しかし、マウスピース矯正では、必要に応じて歯を削ることがあります。主に、歯の移動をスムーズにするため、スペースを確保する目的で行われます。
歯が並ぶスペースが不足している場合、矯正装置で力をかけても歯がうまく移動できないのです。そのため、歯の側面を少し削って歯の移動に必要なスペースを確保します。
歯を削る処置はIPR、もしくはディスキングとも呼ばれます。歯を削ると聞くと不安に思う方が多いかもしれませんが、IPRで削る歯の量はごくわずかです。
一般的に、エナメル質の厚みは2〜3mm程度あります。マウスピース矯正において歯を削る場合の量は、最大でも片側0.25mm程度です。
そのため、削る際に痛みを感じることは基本的にありません。また、歯の健康に対する影響も最小限に抑えられます。
マウスピース矯正を進める上で、必要に応じて歯を削ることがあるということを理解しておくことが重要です。
マウスピース矯正で歯を削るメリット
マウスピース矯正で歯を削ると、さまざまなメリットを得られます。一つずつ確認しましょう。
治療がスムーズに進む
マウスピース矯正で歯を削る最大のメリットは、治療がスムーズに進むことです。歯を削れば必要なスペースを確保できるので、歯が無理なく移動できるようになります。
特に、歯並びが極端に乱れている場合や、重なり合っている歯が多い場合は、歯を削ると矯正治療がスムーズに進むでしょう。複雑な歯の移動が必要なくなるなど、治療を効率的に進められるようになることが多いです。
矯正期間を短縮できることがある
歯を削れば、矯正期間を短縮できることがあるのもメリットでしょう。通常、歯を移動させるためのスペースが十分に確保されていない場合、治療には時間がかかります。
しかし、歯を削ってスペースを作ることで、歯の移動が容易になります。上述したメリットと重複する部分もありますが、治療がスムーズに進めば治療期間が短くなることがあるのです。
歯の見た目を整えられる
歯の見た目を整えられることも、歯を削るメリットでしょう。小さい歯を大きくすることは困難ですが、前歯の形が左右でわずかに異なる場合など、歯の幅や形を調整すると綺麗な見た目に仕上がるでしょう。
矯正後の笑顔に自信を持てるようになるかもしれません。歯並びが整っていたのとしても、歯の形やサイズが不揃いだと、美しい口元には見えません。形を整えることで、バランスの良い歯並びを実現しやすくなります。
理想の歯列を実現しやすい
歯を削ることで、理想的な歯列を実現することが容易になります。歯を削って得られたスペースを利用して、歯を正確に移動させることができるためです。治療計画通りの結果を得やすくなるでしょう。
見た目だけでなく、噛み合わせなどの機能性の向上もしやすくなります。長期的に口腔内を健康に保つことが可能になるかもしれません。
マウスピース矯正で歯を削るデメリット
マウスピース矯正において歯を削るメリットをご紹介しましたが、どのような治療・施術にもデメリットやリスクがあります。ここでは、歯を削るデメリットについて解説します。
削る処置にストレスを感じることがある
削る方法については後述しますが、歯を削る処置にストレスを感じる方は少なくありません。削る際の振動や音に不快感を示す方は多いです。特に、歯の感覚が敏感な人にとっては、不快な処置といえるでしょう。
また、歯を削ることで一時的に歯が痛むこともあります。その場合、治療後のケアが必要になるでしょう。
削った歯は元に戻らない
一度削った歯は、元に戻ることはありません。エナメル質は再生しないため、削られた部分は永久的に失われます。健康な歯のエナメル質が失われることは、歯を削る処置の最も大きなデメリットでしょう。
そのため、削る処置は慎重に行う必要があります。削りすぎると歯の形が不自然になることもあり、見た目や機能に影響を及ぼす可能性があります。
事前の検査を丁寧に行って治療計画を立て、精密に処置を行う必要があるのです。
知覚過敏の症状が出ることがある
歯を削ることで、知覚過敏の症状が出ることがあります。エナメル質が薄くなると、歯の内部の神経が刺激を受けやすくなり、冷たいものや甘いものに対して敏感になるのです。
マウスピース矯正で歯を削った後に生じる知覚過敏の症状は、一時的な場合が多いので過度な心配は必要ありません。長期間続く場合は、必ず歯科医院を受診して相談してください。
隙間が埋まらない可能性がある
綿密に治療計画を立てて必要な量だけ歯を削りますが、歯の移動がうまく進まなかったり、予想外の歯の移動が発生したり、作った隙間が埋まらない可能性もあります。この場合、歯と歯の間に隙間が残るので、見た目や噛み合わせに影響を及ぼすでしょう。
こうしたリスクを最小限に抑えるためには、矯正計画を慎重に立てることが重要です。
マウスピース矯正で歯を削る方法
上述しましたが、マウスピース矯正で歯を削る方法は、主にIPRと呼ばれます。IPRは、歯と歯の間のエナメル質を少量削ることで、歯が正しい位置に移動するためのスペースを確保する方法です。
まずは、歯科医師が歯並びや口内の状態を診察して、必要なスペースを確認します。その後、どの歯をどの程度削るかなどを決定します。
次に、特殊なファイルやサンドペーパー状のやすりを使って、エナメル質を削ります。痛みを感じることは基本的にないので、局所麻酔などは使用せずに行うのが一般的です。歯の表面を滑らかに整えれば、歯を削る処置は完了です。
削る量は非常に少なく、片側0.25mm程度です。歯の両側を削れば1本あたり0.5mmのスペースを確保できます。
歯を削る処置は治療開始前に行うことが多いでしょう。歯が移動できる場所を作ってから矯正治療を始めたほうが、スムーズに治療が進むためです。
稀に、治療途中で歯を削ることもあります。スペースが必要になったことで削ることもありますが、より理想の歯並びに近づけたい、歯の見た目を整えたいなどの理由から行うケースが多いです。
まとめ
今回は、マウスピース矯正で歯を削るメリット・デメリット、方法について解説しました。
歯を削ると聞くと不安に思う方が多いかもしれませんが、さまざまなメリットが得られます。治療がスムーズに進んだり歯の見た目が整ったり、患者さまの負担を減らしながら理想の歯列を実現しやすくできるでしょう。
ただし、削った歯は元に戻らない、一時的な場合が多いですが知覚過敏の症状が出ることがあるなど、デメリットも存在します。歯を削るかどうか、どの程度削るのかは、歯科医師としっかり相談して決定しましょう。