目次
インビザラインは、目立ちにくい透明なマウスピースを使って歯を矯正する方法で、アメリカの会社が開発した矯正治療です。
矯正と言えばワイヤー矯正が一般的ですが「ワイヤーが目立つ」「歯に装着した矯正装置が気になる」「食事が美味しくない」「歯磨きがしにくい」などの理由から、近年はインビザラインを選ぶ方が増えています。インビザラインはマウスピースを使って歯を徐々に動かしますが、治療の途中でマウスピースを作り直すことがよくあります。マウスピースを作り直すことになると「治療がうまくいっていないのでは?」と不安に感じる方もいるでしょう。
そこで今回は、インビザラインのマウスピースが作り直しになる理由とその期間や費用について説明します。
インビザラインでマウスピースが作り直しになる理由
インビザラインは、治療に使うマウスピースを一度にすべて作成します。その数は平均で50枚ほどです。マウスピースの数の多さに驚くと思いますが、スムーズにインビザラインの治療が進むと、1~2週間で新しいマウスピースに交換します。
治療が完了する歯並びをコンピューターでシミュレーションして、治療開始から完了までのマウスピースを一度に作成するのがインビザラインの治療法です。そのため、歯を動かす治療の途中でズレが生じて、マウスピースの作り直しが必要になることがあります。
コンピューターのシミュレーションどおりに歯が動いていない
インビザラインは自動的にコンピューターで矯正中の歯の動きの予想を立てますが、どうしても実際の動きと誤差が出ることがあります。実際に歯を動かしてみるとスムーズに進まないこともあり、コンピューターと人間との間に誤差が出てきます。
マウスピースの装着が正しくない
インビザラインのマウスピースは非常にきつく、ピッタリと歯にはまるようにできています。歯の表面にアタッチメントという装置を付けることで、歯とマウスピースが密着するのです。隙間なく密着することが歯を動かすポイントになるため、慣れるまでは装着が難しく、マウスピースが浮いた状態で装着している方もいます。
少しでもマウスピースが浮いて正しく装着できていないと、歯は理想の状態まで動かず、マウスピースを作り直すことになるため、インビザラインの治療期間も長引いてしまいます。
装着時間が守られていない
インビザラインで大切なのは、マウスピースの装着時間です。マウスピースを1日20~22時間装着することで、歯が動きます。ご飯を食べた後や歯を磨いた後、ついつい寝てしまってマウスピースをつけ忘れてしまうことがあるでしょう。
しかし、食事と歯磨きのとき以外はマウスピースを装着する必要があります。自己管理になるため、装着時間を守れないと歯が計画通りに動かなくなってしまうため、マウスピースを作り直すことになるのです。また、食後は必ず歯を磨いてからマウスピースを装着しないと、汚れに蓋をする状態になるため虫歯になりやすい口腔環境になります。外出先でも歯磨きをする面倒な気持ちから、マウスピースを外す時間が長くなる患者さんもいます。マウスピースが簡単に装着できれば楽なのですが、インビザラインのマウスピースには装着するコツがあり、時間がかかります。
インビザライン矯正は目立ちにくく、マウスピースを食事や歯磨きの時に外せるメリットがありますが、装着が大変というデメリットもあります。
マウスピースを紛失・破損した
インビザラインのマウスピースを食事先で外して忘れてきた話やペットに壊された話をよく聞きます。インビザラインはマウスピースを装着することで歯を動かすため、マウスピースを紛失・破損してしまうと作り直しになってしまうので注意しましょう。
歯科医院では患者さんのすべてのデータを大切に保管しているため、歯型模型からマウスピースをすぐに作り直せます。
奥歯の噛み合わせの調整が必要
インビザライン治療で歯が移動し、治療の中盤になると、奥歯の噛み合わせのズレが生じて、マウスピースを作り直すことがあります。奥歯の噛み合わせが悪いと顎関節症や肩こりや歯周病になりやすく、見えやすい前歯だけがキレイに整っても矯正治療は完成しません。
ほとんどの患者さんにとって矯正治療の目的は「歯並びを良くして見た目をキレイにすること」ですが、噛み合わせが良くなることがとても大切なのです。バランスの良い理想の噛み合わせは、歯の健康寿命を延ばし、いつまでもおいしく食べられて、全身の健康維持につながります。
マウスピースを作り直す流れ
マウスピースの作り直しは、以下の工程でおこないます。
1.アタッチメントを除去する
マウスピースを作り直すために、まずは歯に装着しているアタッチメントを除去し、何もない最初の状態にリセットします。
2.精密検査をする
治療計画を立て直すために、口腔内写真やレントゲンを撮る等の精密検査をします。そして、インビザライン専用のコンピューターで歯をスキャンし、歯型模型を作り直します。
3.治療計画を立て直す
模型・口腔内写真・レントゲンの資料が揃ったらコンピューターで歯の動きをシミュレーションし、新しい治療計画を立て直します。治療計画が決まると、歯型模型を使ってマウスピースの作り直しにかかります。
マウスピースの作り直しにかかる期間
マウスピースの作り直しにかかる期間は、歯科医院によって差がありますが1か月程度は必要です。
歯が一度動いており、インビザライン前の歯並びとは異なるため、すべて始めから作り直します。インビザラインの治療を開始する時と同様に検査や治療計画を立てるところから始めるため、どうしても時間がかかってしまうのです。
マウスピースの作り直しにかかる費用
インビザラインでマウスピースを作り直すことはよくあるため、全体の治療費の中に作り直しの費用が含まれている歯科医院がほとんどです。
しかし、なかには追加料金が発生したり、作り直しの回数が決められた範囲を超えると料金がかかることもあるため、トラブルを避けるために事前に確認しておきましょう。作り直しが無料と書かれていても、金額に上限がある歯科医院もあるため注意が必要です。追加料金は歯科医院によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
マウスピースを作り直している間に注意すること
理想の歯並びになりマウスピースの装着が終了しても、矯正治療で動いた歯はすぐに後戻りしてしまうため、2年間の保定期間が必要です。保定期間とは「リテーナー」と呼ばれる取り外し可能な器具を装着して、歯が後戻りしないようにします。後戻りは簡単に起こるため、新しいマウスピースができるまでは直前まで使用していたマウスピースを使い続けましょう。
また、治療途中で破損したり紛失することもあります。2段階前まで使用していたマウスピースを処分せず、大切に保管しておきましょう。
まとめ
マウスピースの作り直しはインビザラインの治療ではよくあることなので、患者さんは心配する必要はありません。
インビザラインの治療による歯の動きは、年齢や歯並びで個人差があり、治療期間も違います。大切なのは、治療前に歯科医院で事前に相談し、作り直しにかかる追加料金や延期期間、治療中に注意すべきことをしっかりと聞いておきましょう。インビザラインの治療は個人差がありますが、2~3年の長い期間がかかるため根気もいります。注意点も多いため、インビザラインを始める前にしっかりと説明を受けて、心配なことは相談し、些細なことでも遠慮なく聞きましょう。
インビザラインは、決められた時間にマウスピースを正しく装着することで治療を進められるため、本人のしっかりした意思がなによりも大切です。ワイヤー矯正と違い、目立たないまま歯並びを治せるメリットがあるため、インビザラインを希望する患者さんが近年増えています。歯並びによってはインビザラインが適応されないこともあるため、事前のカウンセリングで相談のうえ検討しましょう。