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近年、歯並びを改善する方法として「インビザライン」とよばれるマウスピースを使用した矯正方法が注目を集めています。インビザライン矯正は、歯列を整えるためにゴムかけを行うことがあります。
今回は、インビザラインのゴムかけの具体的な目的や効果について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
インビザラインのゴムかけとは?
ゴムかけとは、インビザラインで使用するマウスピースや歯に接着した突起に、小さな輪ゴムのような形状のゴムを装着することです。このゴムのことを「エラスティックゴム」もしくは「顎間ゴム」といいます。
ゴムかけを行うことによって、さまざまな効果があります。ゴムかけの効果は、以下のとおりです。
矯正期間が短くなる
インビザライン治療は、ワイヤー矯正に比べて歯を動かす力が弱いという特徴があります。
しかし、ゴムかけを行うことで歯に大きな力をかけて歯を大きく動かすことができるため、治療期間が短くなります。
噛み合わせの改善
インビザライン治療は歯を水平方向に動かすことはできますが、歯を上下に動かすことは難しいといわれています。
しかし、ゴムかけを行うことで上下方向に歯に力を加えることができるため、噛み合わせを改善できます。
細かな歯並びの調節
ゴムかけは、インビザライン治療によりある程度歯並びが整った段階で開始します。治療の後半でゴムかけを行うことで、細かな歯のズレを改善することができます。
インビザラインのゴムかけの種類
インビザラインで行うゴムかけは、大きく分けて4種類あります。ゴムかけの種類は、以下のとおりです。
垂直ゴム
歯を噛み合わせたときに上と下の歯の間にすき間ができ、うまく噛み合わない歯並びのことを「開咬(かいこう)」といい、前歯と奥歯の両方に起こります。
垂直ゴムは、主に開咬を治療するときに使用し、開咬がある上下の歯の裏などに装着します。垂直ゴムを装着することで、噛み合っていない上下の歯に対して歯が噛み合う方向に力が働き、開咬を改善することができるのです。
交叉ゴム
交叉ゴムは「交叉咬合(こうさこうごう)」と「鋏状咬合(はさみじょうこうごう)」がある場合に使用します。交叉咬合は、噛み合わせたときに、下の歯が外側に、上の歯が内側にズレている歯並びのことです。鋏状咬合は上の歯が外側に大きくズレていることで、噛み合わせたときに噛み合わない歯並びのことです。
交叉ゴムは、これらの歯並びのズレを改善し、正常な噛み合わせに誘導するために使用します。
Ⅱ級ゴム
Ⅱ級ゴムは、上顎前突を治療するときに使用します。上顎前突は上の歯が出ている歯並びのことで「出っ歯」のことです。
Ⅱ級ゴムは、上の犬歯(前から3番目の歯)と下の第一大臼歯(前から6番目の歯)に装着します。II級ゴムを使用することで、上の前歯をうしろに、下顎の奥歯を前に動かし、上顎前突を改善します。
Ⅲ級ゴム
Ⅲ級ゴムは、下顎前突を治療するときに使用します。下顎前突は、下の歯が出ている歯並びのことで「受け口」のことです。
Ⅲ級ゴムは、上の第一大臼歯(前から6番目の歯)と下の犬歯(前から3番目の歯)に装着します。Ⅲ級ゴムを使用することで、上の奥歯を前に、下の前歯を奥に動かすことで下顎前突を改善します。
インビザラインのゴムかけのやり方
ゴムかけは、マウスピースにゴムをかける方法と歯にゴムをかける方法の2種類あります。
マウスピースにゴムをかける方法は、プレジジョンカットとよばれる切れ込みをマウスピースに設け、ゴムを引っかける方法です。歯にゴムをかける方法は、歯に樹脂もしくは金属の突起を歯に接着し、ゴムを引っかける方法です。
ゴムかけの方法は、ゴムの種類により異なります。ゴムの種類に分けたゴムかけのやり方は、以下のとおりです。
垂直ゴム
垂直ゴムを装着する場合は、まずは一方の歯にゴムを引っかけてから、もう一方の歯にゴムをかけます。前歯の部分に垂直ゴムを引っかける場合は、よく見えるため比較的容易に装着することができます。
しかし、奥歯に装着する場合は見えにくい場合があるため、慣れるまでは鏡で確認しながら装着しましょう。
交叉ゴム
交叉ゴムの装着は、ほかのゴムかけと比較すると難しく感じることがあります。
マウスピースにゴムかけを行う場合は、お口に入れる前にゴムかけを行ってから装着するとスムーズに行うことができます。
歯にゴムかけを行う場合は、内側の突起に引っかけたあとに、もう一方の歯に装着するとうまくいくことが多いです。例えば、下の歯の内側と上の歯の外側に突起があった場合、まずは下の内側の突起にゴムを引っかけてから上の歯の外側の突起に引っかけましょう。
また、交叉ゴムは噛み合わせの部分にあたるため、誤って噛んで切れることがあります。そのため、外出するときは予備のゴムをもち歩きましょう。
Ⅱ級ゴム
Ⅱ級ゴムを装着するときは、下の奥歯に装着したあとに前歯に装着しましょう。装着が難しい場合は、ゴムを引っ張る専用の器具を使用することがおすすめです。
奥歯のフックが見えにくい場合は、頬の粘膜を引っ張ると見えやすくなります。また、慣れないうちは鏡を使いましょう。
Ⅲ級ゴム
Ⅲ級ゴムの装着方法は、基本的にⅡ級ゴムと同じです。上の奥歯にゴムを装着したあとに下の前歯に装着します。
インビザラインのゴムかけはいつからいつまで?
ゴムかけは、インビザライン治療開始後、3か月ほど経過してから行います。ゴムかけの終了時期は、歯並びの状態により異なります。
例えば、歯を大きく動かす必要がある場合は、1年以上ゴムかけが必要となることがありますし、歯を少しだけ動かす場合は数か月でゴムかけを終えることができるでしょう。
また、ゴムかけの効果を得るためには、担当の歯科医師が指示した時間、ゴムを装着する必要があります。この時間よりも装着時間が短くなり効果があまり出ていない場合は、ゴムかけの期間がのびる可能性があるでしょう。
インビザラインのゴムかけに関する注意点
次に、ゴムかけに関する注意点について解説します。ゴムかけに関する注意点は、以下のとおりです。
毎日新しいゴムを装着する
同じゴムを何回も使用すると、ゴムが劣化して装着時に切れることがあります。さらに、ゴムの伸縮力が低下し、矯正効果が低下します。ゴムかけで使用するゴムは、毎日新しいものと交換しましょう。
適切に装着する
適切でない位置にゴムかけを行うと、歯が予定どおりに動かず、治療期間が長くなることがあります。ゴムかけを行うときは、鏡などを使用し、適切な位置に装着しましょう。
装着時間を守る
ゴムかけの矯正効果は装着時間に依存します。担当の歯科医師の指示に従い、装着時間が短くならないように努めましょう。
痛みがある
ゴムかけを行うと痛みがでることがあります。通常であれば1週間程度で痛みは落ち着きますが、1週間以上経過しても痛みが続く場合は、担当の歯科医師に相談しましょう。
食事中は外す
ゴムかけをした状態で食事を行うと、食べ物がゴムに付着し、ゴムが外れる原因となることがあります。場合によっては、ゴムを飲み込んでしまう可能性もあるでしょう。食事中はゴムを外し、食後にゴムを装着しましょう。
まとめ
今回は、ゴムかけの目的と効果について解説しました。
ゴムかけは、インビザライン治療のみで改善することが難しい歯並びを調節する効果や、より大きな力を歯に加えることで治療期間を短縮する効果があります。
ゴムかけの種類は、垂直ゴム、交叉ゴム、Ⅱ級ゴム、Ⅲ級ゴムの4種類があり、治療する歯並びの状態によって使い分けます。ゴムかけの注意点としては、正しい位置でのゴムかけや装着時間の遵守などです。ゴムかけの効果は装着時間に依存するため、決められた時間装着し、インビザライン治療の効果を得られるようにしましょう。