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インビザライン矯正は、当初よりもさまざまな症例に対応できるようになっています。
しかし、インビザラインで開咬も治せるのでしょうか?
そもそも開咬とはどのような状態で、どのような悪影響があるのか、原因を含めて、治療法についても詳しく解説しています。
開咬とは?
開咬(かいこう)とは、不正咬合の1つで、歯科専門用語では「オープンバイト」とも呼ばれています。上下の歯を噛み合わせた際に、奥歯はしっかり噛み合っていても、前歯は隙間ができて噛み合っていない状態のことをいいます。
奥歯は食べ物をすり潰す役割がありますが、前歯は食べ物を噛み切る役割があります。特に麺類などは前歯で噛み切らないと食べにくいですが、開咬の場合、前歯に隙間があるため噛み切ることができないのです。そのため、開咬の方は「麺類を食べるのが苦手」という方が多い傾向にあります。麺類を丸飲みしたり、舌を歯に押し当てて麺類を切って食べている方もいます。
噛み合わせた時に前歯に隙間ができていて、麺類を噛み切るのが苦手という場合は開咬の可能性が高いでしょう。
開咬の原因とは?
開咬は、子どものころの悪習癖が原因となっていることが多いです。そのほかにも、遺伝的なものや口呼吸、顎関節頭の変形なども考えらます。それぞれ、詳しく解説します。
①子どものころの悪習癖
開咬の原因には、子どものころの悪習癖が影響してしまうことがあります。
悪習慣とは、多くの場合「指しゃぶり」が挙げられるでしょう。指しゃぶりは、指を前歯に押さえつけて吸引するため、前歯が前方方向に押し出されてしまいます。指しゃぶりの期間が長ければ長いほど、歯を押し出している期間も長くなるため開咬のリスクも高くなります。また、指しゃぶりは開咬だけでなく、出っ歯の原因にもなります。
指しゃぶりだけではなく「舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)」と呼ばれる、舌を上下の前歯の間に入れる癖、下唇を噛む癖や安静時の舌の位置が正しくない場合も開咬の原因になります。このような悪習癖がある場合は、矯正だけでなく「口腔筋機能療法」という舌やお口周りの筋肉を正しく動かすトレーニングを行う必要もあるのです。
②遺伝
開咬の原因には、遺伝もあるといわれています。
骨格的な遺伝が原因となっている場合は、成長とともに開咬が進行する傾向にあります。最初は気づきにくいかもしれませんが、ご家族に開咬の方がいる場合は、お子さまの歯並びをよく観察し、定期的な歯科検診でもチェックしてもらいましょう。
③口呼吸
口呼吸も開咬の原因になります。
アレルギー性鼻炎などで口呼吸になってしまっている方もいるのではないでしょうか?口呼吸が癖になってしまうと、口を閉じるためのお口周りの筋肉が衰えてしまいます。その結果、開咬となってしまうのです。また、口を開けていることで舌の位置も下がってしまい、舌が下の前歯を押してしまうなどの舌癖にも繋がります。
④顎関節頭の変形
若い女性に多い「顎関節頭の変形」が開咬の原因になることもあります。
顎関節頭の変形とは、下顎頭が吸収されることで下顎骨が変形してしまうものです。重度の顎関節症の炎症により下顎頭が吸収されることもありますが、原因が不明な場合もあります。顎関節症が原因で顎関節頭が変形しているのであれば、矯正よりも先に顎関節症の治療を受けなければいけません。また、開咬の方は奥歯に負担がかかる傾向があるため、顎関節症になりやすいともいわれています。顎に違和感があれば、早めに歯科医院を受診しましょう。
開咬が与える悪影響
開咬は「前歯で食べ物が噛み切れないなどの症状があります」と説明しましたが、開咬が与える悪影響はこれだけではありません。そのほかにも以下の4つの影響を与えてしまいます。
・ドライマウス
・虫歯や歯周病になりやすい
・奥歯に負担がかかる
・発音障害
それぞれ、詳しく説明していきます。
ドライマウス
上下の前歯が開いた状態になると、お口の中が乾燥しやすくなってしまいます。いわゆる「ドライマウス」という症状です。
お口の中は、唾液が潤った状態によって自浄作用などの効果が期待できますが、ドライマウスになるとお口の中が乾燥した状態になるため、細菌が繁殖しやすくなってしまいます。お口の中の病気だけでなく、風邪やインフルエンザにも罹りやすくなってしまうのです。唾液が不足することで、口の中がネバネバしたり舌が痛くなったり口臭の原因になることもあります。ドライマウスは、お口の中だけでなく全身の健康のためにも治しておいたほうがいいでしょう。
虫歯や歯周病になりやすい
「お口の中が乾燥した状態になるため、細菌が繁殖しやすい」と説明しましたが、細菌が繁殖することで虫歯や歯周病になりやすくなります。歯磨きなどでしっかりお口のケアをしていても虫歯や歯周病のリスクが高くなるため、お口のトラブルが起こりやすくなるでしょう。
奥歯に負担がかかる
前歯が噛み合わないということは常に奥歯だけを使用していることになります。それが何十年も続くと奥歯に負担がかかってしまうのです。将来的に考えると、奥歯に痛みが出たり、最悪の場合は奥歯がダメになってしまい、さらに噛めなくなる可能性があります。
お口の噛み合わせは非常に重要です。「ちょっと前歯に隙間があるだけだからいいか」と放置してしまうと、バランスの悪い噛み合わせが原因でお口の中が崩壊してしまうこともあります。見た目の問題だけでなく、噛み合わせを整えるためにも開咬は治したほうがいいでしょう。
発音障害
上下の前歯に隙間があると、発音の際に空気が抜けてしまいます。特にサ行、タ行、ラ行は発音しにくくなります。はっきりと発音できないため、相手に伝わりにくく不便に感じることもあるでしょう。
開咬の治療をすることで、発音障害も改善できます。
インビザラインで開咬は治せる?
インビザラインで開咬は治せます。
開咬とは、奥歯のみがしっかり噛み合っている状態であるため、前歯でもしっかり噛み合うようにするためには、前歯だけ治療するのではなく、奥歯を噛み合う反対方向に沈み込ませる動きが必要になります。この動きを「圧下」といいますが、インビザラインはワイヤー矯正よりも圧下させるのが得意です。また、臼歯を圧下させるだけでなく、前歯を引っ込めて噛み合う方向に移動させなければいけませんが、この前歯の移動もインビザラインは効果的に行えます。
そのほかにも、舌で歯を押し出す癖がある場合、インビザラインの装置をはめていることで歯がカバーされ、歯にかかる舌圧を減らしてくれます。よほど重度の開咬でない限り、ほとんどのケースでインビザライン矯正が可能です。
インビザラインで開咬を治すためにかかる期間と費用
インビザラインで開咬を治すためにかかる期間は、2年ほどです。費用は自由診療になるため歯科医院によって異なりますが、相場は70〜100万円ほどでしょう。
開咬を治すうえで重要なのが、舌などの悪習癖があるかどうかです。もし悪習癖がある場合は、同時に筋機能療法も必要になります。いくらきれいな噛み合わせに治せたとしても、悪習癖をそのまま放置しておくと、いずれまた舌などの癖が原因で噛み合わせが悪くなってしまうからです。筋機能療法も必要となると治療期間は延び、費用も増える可能性があります。
いつから開咬を治したほうがいい?
開咬は、できれば早い段階で治療したほうがいいです。特に悪習癖が原因となっている場合は、悪習癖が続いている状態を放置すればするほど治療は難しくなります。小さいお子さまが治療を受ける場合は、インビザラインとは異なる装置を使用することになりますが、5〜6歳ごろから矯正を始められます。
まとめ
開咬にはさまざまな原因がありますが、その中でも多いのが子どものころの指しゃぶりなどの悪習癖です。このような悪習癖がある場合は、インビザラインで歯並び・噛み合わせをきれいに整えたとしても、同じように舌を前に押し出すことでいずれまた悪くなってしまいます。そのため、筋機能療法というお口周りの筋肉を正しく動かすトレーニングも必要です。また、開咬は将来的なデメリットも多くあります。前歯が噛み合わないことで奥歯に負担がかかったり、発音障害が出ることもあるでしょう。
インビザラインでは開咬を効果的に治すことができます。治療を始めるタイミングが遅いと治療が難しくなるケースがあるので、できるだけ早い段階で開咬の治療を始めたほうがいいでしょう。