目次
「口を開閉する際に顎の関節から音がする」「食事のたびに顎が痛み、憂鬱になる」「朝目覚めると顎の周りに重さやだるさを感じる」といった症状に悩まされていませんか。現代社会において、顎関節症は珍しくない症状の一つです。
その背景には、歯の噛み合わせの不具合が深く関わっているケースが少なくありません。
この記事では、顎関節症の具体的な症状から、マウスピース矯正による治療の可能性、そして噛み合わせとの深い関係性まで、詳しく解説していきます。また、噛み合わせ以外の顎関節症を引き起こす原因についても触れています。
ご自身の症状と向き合い、適切な治療方法を検討する参考にしてください。
顎関節症の症状

顎関節症は、顎の関節や周辺の筋肉に異常が生じる疾患です。症状は人によってさまざまですが、主に関節音や痛み、開口障害、全身への影響といった4つのサインが現れることが多いです。
最も多く見られるのが、口を開け閉めする際のカクカク、ゴリゴリといった関節音です。この音は顎関節の中にあるクッション材の役割を果たす関節円板という組織がずれることで生じます。
関節円板のずれは、初期では音だけですが、放置するほど周囲の筋肉に緊張が生じ、痛みへ発展しやすくなります。
顎関節やその周辺の痛みも主要な症状の一つです。食事中に噛むときの痛み、あくびをしたときの痛み、朝起きたときの顎の疲労感や痛みなどが該当します。この痛みは顎だけにとどまらず、こめかみや頬、首筋などまで広がることもあります。
開口障害も重要なサインです。健康な成人であれば、口は指が縦に3本入るくらいまで開きますが、顎関節症になると十分に開かなくなります。ひどい場合には指が1本も入らないほど開口が制限され、食事に大きな支障をきたします。
さらに、顎関節の不調は局所的な問題にとどまらず、全身症状として現れることがあります。
たとえば慢性的な頭痛や肩こり、めまい、耳鳴り、目の疲れといった症状も関連している可能性があります。顎の筋肉は、頭部や首の筋肉と連動しており、顎の異常が全身のバランスを崩すことがあるためです。
マウスピース矯正で顎関節症は治療できる?

マウスピース矯正での治療が有効かどうかは、顎関節症の原因や進行度によって大きく異なります。治療を始める前には、歯科医師による詳細な検査と診断が不可欠です。
レントゲン撮影やCT検査、必要に応じて顎の動きの分析などを通して、ご自身がどのタイプに当てはまるのかを正確に把握することが重要です。
治療できるケース
マウスピース矯正が特に効果を発揮しやすいのは、噛み合わせのズレが関節への負担を生んでいるタイプの顎関節症です。たとえば、上下の歯が正しく噛み合わず一部の歯だけに強い力がかかっている状態や、出っ歯、受け口といった状態では、顎関節が本来の位置からずれます。
患者さまご自身では自覚しにくいものの、わずかな噛み合わせのズレが長期間続くことで、顎関節に大きな負担が蓄積されます。こうした場合、マウスピース矯正によって歯を適切な位置に動かすことで負担が軽減され、症状が改善していきます。
矯正治療中は定期的に歯科医院に通うことで、顎関節や噛み合わせの状態を継続的に確認できます。治療の進行に応じて必要な調整を行えることは、マウスピース矯正を含む矯正治療全般の大きなメリットといえるでしょう。
治療できないケース
顎関節の構造そのものに異常がある場合は、歯並びを整えても症状の改善が難しいことがあります。代表的なのが、関節円板が前方へずれたまま元の位置に戻らない状態です。
このような場合、矯正治療だけでの改善は期待しにくく、外科的な処置や専門的なスプリント治療が必要となることがあります。
また、長期間にわたる負担によって顎関節自体に変形が生じているケースも、マウスピース矯正だけでの治療は困難です。歯の位置を変えるだけでは、関節そのものの変形を元に戻すことはできないためです。
さらに、主な原因が精神的ストレスや筋肉の緊張である場合、噛み合わせを整えても症状が完全には消えないことがあります。このようなケースでは、マウスピース矯正に加えて、ボツリヌス治療やストレス管理、理学療法などを併用することが検討されます。
顎関節症と噛み合わせの関係とは

顎関節症と噛み合わせには密接な関係があります。噛み合わせの問題がどのようにして顎関節に影響を及ぼすのか、そのメカニズムを理解することが大切です。
理想的な噛み合わせ
噛み合わせとは、上下の歯が接触する際の関係性のことを指します。理想的な状態では、上下の歯が均等に接触し、顎の関節に無理な力がかかりません。
しかし、歯並びが乱れていたり、特定の歯だけが強く当たったりすると、顎はバランスを取ろうとして本来とは異なる位置で噛むようになります。
不自然な顎の位置がもたらす影響
椅子の脚が1本だけ短いと、ガタガタして安定しません。これと同様に、噛み合わせがずれると顎関節にも負担がかかります。
不自然な顎の位置が習慣化すると、顎関節を構成する骨や関節円板、周辺の筋肉に持続的なストレスがかかります。特に問題となるのが、左右のバランスが崩れているケースです。
片側だけで噛む癖がある方や、片側の歯が高い、または低いといった状態では、顎が左右にずれた位置で機能することになります。このずれが片側だけに過度な圧力をかけ、関節円板のずれや関節の変形を引き起こす原因となります。
噛み合わせ以外の顎関節症の原因

発症する原因は噛み合わせだけでなく、他にも複数の要因があります。
歯ぎしり・食いしばり
最も多い原因の一つが、歯ぎしりや食いしばりといった習癖です。これらは睡眠中に無意識に行われることが多く、自覚していない方も少なくありません。
歯ぎしりや食いしばりでは、通常の咀嚼時の何倍もの力が顎関節にかかります。毎晩のように強い力が加わり続けると、顎関節や周辺の筋肉が疲労し、炎症を起こすことがあります。
精神的ストレス
ストレスを感じると、無意識に歯を食いしばったり、顎周辺の筋肉を緊張させたりすることがあるため、精神的ストレスも大きな要因の一つです。また、ストレスによって睡眠の質が低下し、歯ぎしりが増えることもあります。
日常的な癖
日常の姿勢や癖も見逃せない要因です。頬杖をつく習慣がある方は、片側の顎関節に持続的な圧力がかかります。また、うつ伏せで寝る、いつも同じ側を下にして横向きで寝るといった睡眠時の姿勢も偏った負担がかかりやすくなります。
外傷
外傷も顎関節症の原因となります。転倒やスポーツでの衝撃、交通事故などで顎を強く打つと、顎関節や周辺組織が損傷することがあります。事故直後は問題がなくても、数週間から数ヶ月後に症状が現れるケースもあるため注意が必要です。
まとめ

顎関節症は、口を開けるときの関節音や痛み、開口障害などを引き起こし、生活の質を低下させる疾患です。マウスピース矯正は、噛み合わせの問題が原因となっている場合に有効で、歯並びや噛み合わせを整えることで顎関節への負担を減らし、症状改善が期待できます。
ただし、関節円板の重度のずれや骨の変形、筋肉の緊張やストレスが主因の場合は、矯正だけでは十分な効果が得られないこともあります。
顎関節症は噛み合わせと密接に関わりますが、歯ぎしり・食いしばり、ストレス、姿勢や癖、外傷などそれ以外の要因も発症に影響します。症状にお悩みの方は、まず歯科医院で詳しい検査を受け、適切な治療法を相談することが大切です。
品川港南歯科・矯正歯科クリニックでは、痛みや施術時間を抑えながら自然な仕上がりの治療を目指しています。マウスピース矯正やセラミック治療、虫歯治療、ホワイトニングなどにも力を入れています。

